【薬剤師監修】フィナステリドとザガーロなら、フィナステリドからはじめよう。その違いとは。
AGA治療の飲み薬として用いられることが多いのが、フィナステリドとザガーロですよね。
同じ治療薬ですが、違いを知っておくことは期待できる効果や副作用、費用などの面で非常に大切です。
この記事では、フィナステリドとザガーロの違いを紹介し、フィナステリドからはじめた方がいい理由について解説します。
この記事の監修者
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北海道大学大学院卒業
薬局薬剤師としてAGAや壮年期脱毛症、円形脱毛症の医薬品調剤や服薬相談を多数経験
薄毛の悩みを解決できる医学薬学知識を啓蒙することで、患者さんのより良い人生に貢献したい
と思っております。
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フィナステリドとザガーロって?
AGA治療をはじめた方やこれからはじめる方にとって、「フィナステリド」も「ザガーロ」も聞き慣れない言葉ですよね。
まずは、フィナステリドとザガーロについて詳しく説明します。
フィナステリドとは
フィナステリドとは、アメリカのメルク社が開発したAGA治療薬の一つです。
「プロペシア」の名前で商品化され、日本でもAGA治療の内服薬として処方されています。
フィナステリドの効果は、AGA進行の防止です。
AGAの原因となる男性ホルモン「ジヒドロテストステロン」を抑制し、髪の発毛サイクルを正常化させる働きがあります。
プロペシアの値段は、多くの場合、1ヶ月分の処方(30粒)で約7,000円、3ヶ月分(90粒)で約20,000円。
ザガーロとは
ザガーロはデュタステリドを主成分としたAGA治療薬の一つです。
こちらはイギリスのグラクソ・スミスクライン株式会社が開発し、「プロペシアに次ぐ第2のAGA治療薬」として認可されています。
ザガーロの効果は、フィナステリドのプロペシアと同じくAGAの進行の予防です。
ただし、効果は同じでも、違う点が多々あるので気をつけてください。
プロペシアとザガーロの違い
前述のとおり、「AGA治療薬」としては、プロペシアもデュタステリドのザガーロも同じです。
違いを一覧表にしてみました。
プロペシア | ザガーロ | |
有効成分 | フィナステリド | デュタステリド |
AGAガイドラインによる推奨度 | A(行うよう強く勧める) | A(行うよう強く勧める) |
副作用 | そう痒症
じん麻疹 発疹 血管浮腫 性機能不全 AST上昇 ALT上昇 γ-GTP上昇 乳房圧痛 乳房肥大 抑うつ症状 めまい |
発疹
じん麻疹 アレルギー反応 瘙痒症 限局性浮腫 血管性浮腫 頭痛 抑うつ気分 浮動性めまい 味覚異常 性機能不全 乳房障害 精巣痛 精巣腫脹 脱毛症(主に体毛脱落) 多毛症 腹部不快感 腹痛 下痢 倦怠感 血中CK増加 |
作用 | 5αリダクターゼII型 | 5αリダクターゼI型
5αリダクターゼII型 |
併用禁忌薬 | なし | なし |
価格相場 | 5,000円~8,000円 | 8,000円~10,000円 |
ジェネリック | あり | あり |
※参考:ザガーロカプセル0.1mg/ザガーロカプセル0.5mg
※参考:プロペシア錠0.2mg/プロペシア錠1mg
ここでは上記を踏まえたうえで、以下3つのポイントで両者の違いを説明します。
- 効果の違い
- 副作用の違い
- 価格の違い
効果の違い
そもそもAGAの原因となるDHTは「5αリダクターゼ」と呼ばれる還元酵素によって作られます。
この5αリダクターゼには、2つの種類があります。
- I型:あらゆる体毛の皮脂腺に存在する
- II型:前頭部・頭頂部に多い
プロペシアはII型の抑制には効果がありますが、I型の抑制には効果が期待できません。
一方で、ザガーロはI型、II型、両方を抑制できます。
効果の範囲でいえば、「ザガーロのほうが大きい」といえるでしょう。
海外で行われた試験では、ザガーロの方がプロペシアよりも「高い効果が期待できる」という報告※があります。
※グラクソ・スミスクライン株式会社 |ザガーロカプセル0.1mgザガーロカプセル0.5mgに関する資料
具体的には、毛髪の太さや硬毛数の増加数が、プロペシアよりザガーロのほうが多かったのです。
まとめると以下のとおりです。
プロペシア | ザガーロ | |
5αリダクターゼI型 | × | ◯ |
5αリダクターゼII型 | ◯ | ◯ |
ただし、ザガーロのほうがプロペシアより比較的値段が高いという点に注意してください。
値段の違いに関しては後述します。
副作用の違い
内服薬を服用する上で気をつけなければならないのが「副作用」です。
プロペシアとザガーロでは添付文書に書かれている副作用が異なります。
プロペシア | ザガーロ | |
副作用 | 発疹
じん麻疹 アレルギー反応 瘙痒症 限局性浮腫 血管性浮腫 頭痛 抑うつ気分 浮動性めまい 味覚異常 性機能不全 乳房障害 精巣痛 精巣腫脹 脱毛症(主に体毛脱落) 多毛症 腹部不快感 腹痛 下痢 倦怠感 血中CK増加 |
そう痒症
じん麻疹 発疹 血管浮腫 性機能不全 AST上昇 ALT上昇 γ-GTP上昇 乳房圧痛 乳房肥大 抑うつ症状 めまい |
製薬会社が国内で実施した試験の結果をみると、副作用の発生頻度も違います。
プロペシア:4.3%
ザガーロ:17.1%
単純に副作用の発生頻度だけを比べると、「ザガーロのほうが発生頻度が高い」といえるでしょう。
ただし、そもそもまったく異なる試験の結果ですので、一概に比較することはできません。
ザガーロの副作用に関しては、こちらの記事でも解説しています。
価格の違い
プロペシアとザガーロは価格の面でも違いがあります。
プロペシア | ザガーロ | |
薬代相場 | 5,000円~8,000円 | 8,000円~10,000円 |
このようにザガーロのほうが基本的に高いのです。
まずはプロペシアからはじめて、効果が認められなければザガーロに切り替えるのもおすすめです。
ただし、自分で判断するのではなく、かならず医師や専門家に相談しましょう。
プロペシア、ザガーロ、ともにジェネリック剤があります。
もっとも、ジェネリック医薬品同士で比較してもプロペシアのほうが安いです。
ザガーロのジェネリック医薬品に関しては、こちらの記事をご覧ください。
フィナステリドからはじめる理由
今まで紹介してきたことを総括した上で、フィナステリドかザガーロか迷ったら、まずはフィナステリドから始めるべき理由について解説します。
フィナステリドでも十分効果が期待できるから
AGA治療は、フィナステリドで十分効果が期待できる場合も多いです。
日本人を対象とした試験では、フィナステリドを飲んでいると、3年間で約8割の人で、AGAの進行防止や改善が認められたという報告があります。(※MSD プロペシア承認申請資料から引用)
また、前述の通り、製薬会社が公表しているデータから、ザガーロでは17%の人で副作用が認められています。
服用した後の副作用のリスクを減らす意味でも、フィナステリドから始めた方がリスクが少ない可能性があります。
クリニックや皮膚科によっては、あえてフィナステリドを処方するところもあるほどです。
価格が安いから
AGA治療は薬を飲んだら飲んだら終わり、というわけではありません。
長期的な目線で続けていかなければならないものです。
フィナステリドのほうがランニングコストが安く、経済的に負担や不安を感じることなく使い続けられる可能性が高いのです。
まとめ
フィナステリドとザガーロについてまとめます。
- フィナステリドもザガーロも同じAGA治療薬、効果はAGAの進行防止
- ザガーロのほうがAGA進行防止効果は高そうだが、その分、副作用の発生頻度も高い可能性がある
- ザガーロにはジェネリック医薬品がないため、フィナステリドよりも経済的な負担が大きい
- どちらかで迷った場合は、フィナステリドからはじめるのがおすすめ
ただし、すべての方にフィナステリドがおすすめできる、というわけではありません。
どちらを使うべきなのかは、きっちりと診察を受けた上で医師や専門家などと相談するのがベストです。