【薬剤師監修】ノコギリヤシのサプリメントは育毛・発毛効果なし?
「ノコギリヤシのサプリメントは薄毛に効く」
という話は珍しくありませんよね。
しかし、「本当に効果があるのか」「そもそもサプリメントは薄毛に効くのか」わからない方も多いですよね。
この記事では、ノコギリヤシやそれ以外のサプリメントにおける育毛効果を徹底解説します。
この記事の監修者
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北海道大学大学院卒業
薬局薬剤師としてAGAや壮年期脱毛症、円形脱毛症の医薬品調剤や服薬相談を多数経験
薄毛の悩みを解決できる医学薬学知識を啓蒙することで、患者さんのより良い人生に貢献したい
と思っております。
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ノコギリヤシとは
ノコギリヤシとは、アメリカの南東部で育つヤシの一つです。古来から生殖障害の改善や利尿、鎮静などに効果があるとされ、民間薬として幅広く使われていました。
現在ではサプリメントなどに加工され、次のような症状を改善したい、という方に愛されています。
- 排尿時の不快感
- 慢性骨盤痛
- 片頭痛
- 脱毛など
しかし、上記はすべて研究段階です。
厚生労働省では次のように紹介しています。
前立腺肥大以外のさまざまな症状・疾患に対するノコギリヤシの研究は十分におこなわれておらず、その効果に関して結論づけることはできません。
出典:厚生労働省|海外の情報
さまざまな研究がされているのは事実ですが、効果を信じすぎないようにしましょう。
上記の症状が見られる場合、ノコギリヤシの服用ではなく病院やクリニックを受診するのがおすすめです。
ノコギリヤシサプリメントの育毛効果
「ノコギリヤシは5αリダクターゼを抑制する」と言われています。
後述しますが、5αリダクターゼとは、脱毛因子や脱毛タンパクを放出する男性ホルモンのDHT(ジヒドロテストステロン)を生み出す酵素です。
5αリダクターゼを抑制することによってAGAの原因であるDHTが生まれづらくなるため、薄毛の改善を期待できる可能性があるわけですね。
海外の研究結果にも「ノコギリヤシで薄毛が改善した」という報告があります。
この研究は軽度〜中等度のAGA患者に対して行われたもので、24ヶ月間毎日ノコギリヤシを投与された人の38%に薄毛改善の傾向が見られたという内容です。
一方で、「ノコギリヤシがDHTを抑制する」という情報には科学的根拠がありません。
ノコギリヤシに含まれる「オクタコサノール」「ステロール」といった成分には、5αリダクターゼの生成を抑制する作用があると考えられています。これが「ノコギリヤシによる薄毛改善効果」の理由です。ただ、この作用に関する科学的根拠はまだ得られていません。
そのため、ノコギリヤシのサプリメントに頼るのではなく、あくまで「治療の補助」として必要な分を摂取するのがおすすめです。
ノコギリヤシの目安摂取量
ノコギリヤシは目安摂取量が決められているわけではありません。
ただ、300〜350mgを「目安」とされることが多いです。
ノコギリヤシサプリメントを販売するAsahiでは、「320mg」を推奨しています。
1日たった2粒で1日目安量の320mg※を手軽に摂取することができます。
ノコギリヤシの副作用
厚生労働省では、ノコギリヤシの副作用に関してこのような注意喚起をしています。
ノコギリヤシの摂取に対して、ほとんどの人は忍容性があります。消化器症状や頭痛などの軽い副作用が認められる可能性があります。
引用のとおり摂取しすぎたとしても、忍容性があるため重大な副作用を引き起こすリスクは低いと考えられます。
だからといって、摂取しすぎるのはおすすめできません。
ノコギリヤシの摂取が危険な可能性がある人
ノコギリヤシはすべての人が摂取できるわけではありません。
以下の人は摂取を控えましょう。
- 抗血液凝固薬を服用している人
- AGA治療薬を服用している人
- 子供や女性
詳しく解説します。
抗血液凝固薬を服用している人
抗血液凝固薬を服用している人はノコギリヤシの摂取を控えたほうがよいでしょう。
ノコギリヤシは出血を促す作用があるといわれています。
いわゆる「血液さらさら食品」といわれるイチョウ葉エキス・にんにく・たまねぎ・ノコギリヤシ・EPAやDHA・ビタミンE、イチゴ・トマト・きゅうり・みかん・ぶどうなどサリチル酸を多く含む野菜類は、血小板凝集抑制薬・抗血栓薬との相互作用の可能性があることが報告されています(出血傾向の亢進)。
どうしても摂取したい場合、医師に相談するのがおすすめです。
AGA治療薬を服用している人
AGA治療薬を服用している人も気をつけましょう。
ノコギリヤシは上述したとおり、DHTを抑制する効果が報告されています。
フィナステリドやデュタステリドも同じように5αリダクターゼの働きを阻害し、DHTを抑制する効果があります。
ただし、併用したからといって効果が高まるわけではありません。
むしろ、副作用や健康被害のリスクが高くなる恐れがあるでしょう。
フィナステリドやデュタステリドに関しては下の記事をご覧ください。
子供や女性
子供や女性には服用をおすすめしません。
安全性が明らかになっていないからです。
特に、妊娠中や授乳中の女性は気をつけてください。
妊娠中、あるいは授乳中の女性におけるノコギリヤシの使用は安全でない可能性があります。
出典:厚生労働省|海外の情報
このように、健康被害が生じてしまう恐れがあります。
ノコギリヤシサプリメントより効果のある育毛・発毛方法
ノコギリヤシサプリメントより効果があるAGAの治療法は以下のとおりです。
- フィナステリドの内服
- デュタステリドの内服
- ミノキシジルの外用
ノコギリヤシのサプリメントを摂取する際は、これらのAGA治療を同時進行するのがおすすめです。
それぞれ説明します。
フィナステリド・デュタステリドの内服
フィナステリド・デュタステリドは、ノコギリヤシと違って科学的に「5αリダクターゼの働きを阻害する」とわかっています。
具体的に言うと、5αリダクターゼの働きを阻害してDHTが生み出されるのを防ぐわけです。
ただ、フィナステリドとデュタステリドは作用する5αリダクターゼの種類が違います。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ミノキシジルの外用
ミノキシジルの外用は、毛母細胞に作用して髪の成長と発毛を促進します。
AGAによって乱れたヘアサイクルを正常化させる働きがあります。
上述した「フィナステリド・デュタステリドの内服」と併用して、ミノキシジルの外用をはじめるのがおすすめです。
ミノキシジルの外用薬に関しては、こちらの記事をご覧ください。
ノコギリヤシのサプリメントと一緒に摂取したい栄養素
AGA治療・対策する際は、ノコギリヤシのサプリメントとともに亜鉛を摂取しましょう。
なぜなら、亜鉛も5αリダクターゼを抑制する効果が期待されているからです。
ノコギリヤシと同じく科学的な根拠は認められていませんが、そもそも亜鉛は髪に良い影響を及ぼします。
どういうことかというと、髪の主成分である「ケラチン」の生成をサポートする役割があるのです。
まとめ
ノコギリヤシのサプリメントについてまとめます。
- ノコギリヤシは5αリダクターゼを抑制する働きが示唆されている
- ただし、科学的な効果は認められていない
- フィナステリド・デュタステリドの内服かミノキシジルの外用の補助として使うのがおすすめ
- 同じく5αリダクターゼの抑制が示唆されている亜鉛も摂取する
サプリメントは手っ取り早く摂取できますが、確実な効果は得られないので注意してください。
AGA治療は科学的根拠に基づいた方法を選択しましょう!