亜鉛に育毛効果があるって本当?髪に与える影響と効果的な摂取方法を紹介
「亜鉛は髪に良い効果があるって本当?」
「亜鉛を多く摂取すれば髪は増える?」
薄毛に悩む方は、このような疑問を抱くことも多いでしょう。
亜鉛は髪の生成に大きな効果をもたらす栄養素ですが、いくつか注意しなければならない点もあります。
そこでこの記事では、以下の点を解説します。
- 亜鉛の育毛効果と科学的なメリット
- 亜鉛の摂取量や目安量
- 効果的な摂取方法
亜鉛に関する科学的な知識を蓄えて「本当に効果がある育毛方法」を把握するためにも、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の監修者
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北海道大学大学院卒業
薬局薬剤師としてAGAや壮年期脱毛症、円形脱毛症の医薬品調剤や服薬相談を多数経験
薄毛の悩みを解決できる医学薬学知識を啓蒙することで、患者さんのより良い人生に貢献したい
と思っております。
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亜鉛は育毛効果が期待できる!
亜鉛の効果を解説するために「育毛」「発毛」の意味を定義しましょう。
育毛:「現在生えている髪」を強く・太くする
発毛:「まだ生えていない新しい毛」を生み出す
このうち亜鉛の効果が期待できるのは「育毛」です。
つまり、亜鉛を摂取したからといって発毛するわけではないので注意してください。
一方で、亜鉛は髪の生成をサポートする役割があります。
発毛が期待できるもの・薄毛を改善できるものではありませんが、髪を成長させるうえで非常に重要なのです。
そもそも「亜鉛」ってどんな栄養素なの?
次に亜鉛の効果を具体的に説明します。
ここで解説するのは以下の3点です。
- 亜鉛は人の健康維持に必須のミネラル
- 亜鉛の主なはたらき
- 抜け毛以外にも…亜鉛不足になると起きること
一つずつ解説します。
亜鉛は人の健康維持に必須のミネラル
亜鉛は人間の骨や皮膚をはじめ、臓器や組織などに存在する必須ミネラルの一種です。
タンパク質の合成をサポートする役割をもっており、酵素の構成成分として非常に重要です。
このように健康において大事な栄養素である一方、「吸収率が低い」という特徴があります。
京都大学の論文においても、次のように解説されています。
食物から摂取した亜鉛の消化管における吸収率は、摂取量や年齢により増減はあるが、前述の通り約30%程度と高くない。
出典:J-STAGE
さらに体内で生成できないため、食事や亜鉛サプリから摂取しなければなりません。
したがって、意識しなければなかなか十分な量を取り入れられないのです。
亜鉛の主なはたらき
亜鉛には人間の健康維持のためのさまざまなはたらきがあります。
- 免疫システムの維持
- 骨や爪の成長
- 味覚機能である味蕾(みらい)細胞の再生
- 脳機能の維持
- 肝臓・消化器官など内臓サポート
- 幼児の発育補助
- 髪、肌の健康維持など
タンパク質の再合成やDNAの合成にも必要な要素で、健康な体づくりに不可欠な新陳代謝を促します。
人間の舌の表面にあるザラザラした味蕾(みらい)細胞と呼ばれるものは亜鉛のはたらきによって活性化するので、味覚を感じるための役割も担っています。
言い換えると、亜鉛不足が続くと味覚障害が起こる恐れがあるわけです。
さらに、アミノ酸をもとに作られる髪の毛の主成分「ケラチン」をつくるのが亜鉛です。
ケラチンは髪の毛の主成分として90%を占めるため、亜鉛は毛髪の生成に欠かせない成分といえます。
抜け毛以外にも…亜鉛不足になると起きること
健康な体づくりに欠かせない亜鉛ですが、不足すると全身に次のような影響がでます。
- 皮膚炎・脱毛
- 貧血
- 味覚障害
- 発育障害
- 性腺機能不全
- 食欲低下
- 下痢
- 骨粗しょう症
- 創傷治癒遅延
- 易感染性
参考:一般社団法人 日本臨床栄養学会「亜鉛欠乏症の診療指針 2018」
脱毛の症状が報告されていますが、これはAGAによるものではありません。
亜鉛が不足したことによって頭皮環境が悪化し、髪が抜けやすくなるのです。
脱毛は毛包周辺の皮膚障害で発症し,機械的刺激を受ける部位に強く現れる.
その他、上述したようなリスクがあります。
亜鉛不足に陥らないよう、日頃の食生活をしっかりと見直すのが大事です。
亜鉛が髪に与える嬉しい効果!
亜鉛は発毛を促すものではありません。
ただ、髪に良い効果をもたらすのも事実です。
- 髪の主成分である「ケラチン」の生成を助ける
- 薄毛進行の原因となる「5αリダクターゼ」を抑える
詳しく解説します。
髪の主成分である「ケラチン」の生成を助ける
髪の毛はケラチンというタンパク質から構成されており、成分の9割を占めています。
亜鉛はこのケラチンを生成するサポートを担っているのです。
ケラチン生成の過程について説明しましょう。
体内に取り込まれたタンパク質は、アミノ酸に分解されます。
アミノ酸が再結合してケラチンになるのですが、その際に亜鉛が必要になるのです。
亜鉛が不足すればケラチンが作られにくくなってしまい、豊富にタンパク質を摂取しても髪が十分に育ちません。
反対に亜鉛をしっかり摂取していれば、健康的な髪が作られやすくなるわけです。
薄毛進行の原因となる「5αリダクターゼ」を抑える
薄毛の原因はジヒドロテストステロン(DHT)と呼ばれる男性ホルモンです。
ジヒドロテストステロンは5αリダクターゼという酵素のはたらきによって生み出されます。
亜鉛には5αリダクターゼを抑制し、DHTの生成を抑えるはたらきがあると言われているのです。
しかし、科学的な根拠はありません。
あすか製薬でも次のように解説しています。
亜鉛のDHT抑制作用についてはさまざまな研究機関が臨床試験を行っていますが、確かな有効性を示した結果はほとんどありません。
出典:男性ホルモン研究所
もっとも、亜鉛が髪の毛の生成にとって重要な栄養素であることは間違いありません。
科学的根拠のあるAGA治療をはじめるとともに、しっかりと亜鉛を摂取しましょう。
サプリメントに要注意!亜鉛の過剰摂取はNG
亜鉛を食べ物以外から摂取する場合、適切な量を守らないと健康に害が及ぶ危険性があります。
亜鉛サプリや複数のサプリを飲む場合は、服用前によく調べてから、注意して摂取するようにしてください。
亜鉛を過剰摂取した場合や、不適切な利用をした場合の影響については、下記の例があげられます。
- 悪心
- 嘔吐
- 食欲不振
- 腹部痙攣
- 下痢
- 頭痛
詳しくは以下の記事でも解説しています。
育毛のために亜鉛を上手に取るためには?
次に、育毛するための「亜鉛を上手に摂取する方法」を解説します。
おすすめの方法は以下の4つです。
- 亜鉛の1日の摂取推奨量
- 亜鉛を多く含む食べ物
- ビタミンC・動物性タンパク質・クエン酸と一緒に摂るのがおすすめ
- 亜鉛の吸収を妨げるものもある
亜鉛の1日の摂取推奨量
亜鉛の1日の摂取推奨量を表で一覧化しました。
亜鉛の1日の平均摂取推奨量 | 亜鉛の1日の安全な上限値 | |
18〜29歳の男性 65~74歳の男性 |
11 mg | 40 mg |
30~64歳の男性 | 11 mg | 45 mg |
18〜74歳の女性 | 8 mg | 35 mg |
妊婦 | +1 mg | - |
授乳婦 | +3 mg | - |
参考:健康長寿ネット
詳しくは以下の記事でも説明しています。
亜鉛を多く含む食べ物
亜鉛は普段の食事から摂取するのがおすすめです。
サプリメントなどで「亜鉛だけ」を摂取するより、吸収率が高くなるからです。
亜鉛を多く含む食品を具体的にご紹介します。
- 魚介類(牡蠣、いわし、しらす、うなぎなど)
- 肉類(豚、牛、鶏など)
- 藻類(のり、わかめ、あおさ、ひじきなど)
- 野菜類(切り干し大根、えだまめ、しそなど)
- 豆類(きな粉、油揚げ、あずきなど)
- 種実類(かぼちゃ、ごま、アーモンドなど)
特に牡蠣には100gあたり14.5㎎もの亜鉛が含まれています。
普段自炊しない人でも、スーパーのお惣菜コーナーなどで意識して選ぶのがおすすめです。
亜鉛を多く含む食品については下の記事でも詳しく解説しています。
ビタミンC・動物性タンパク質・クエン酸と一緒に摂るのがおすすめ
亜鉛の効果をより高めるためには、食べ合わせを考えて食事することをおすすめします。
なぜなら体内に入った亜鉛は、小腸で約30%しか吸収されないからです。
以下の栄養素を同時に摂取することで、吸収率を高められます。
- ビタミンC・クエン酸
- 動物性タンパク質
それぞれの栄養素を詳しく解説します。
ビタミンC・クエン酸
ビタミンCやクエン酸を含む食品とあわせて摂ることで、亜鉛の吸収効率を高めることができます。
特にビタミンCはクエン酸のキレート作用(※)を高めるはたらきがあるため、亜鉛の吸収率を高められるのです。
キレート作用とは「栄養素を包み込んで吸収を高める効果」を意味します。
動物性タンパク質
その他、肉や魚介類などの動物性タンパク質は亜鉛の吸収を助ける効果が示唆されています。
動物性タンパク質の摂取量が増えることで、亜鉛の吸収率も増加する可能性があります。
亜鉛の吸収を妨げるものもある
亜鉛の吸収を妨げてしまう栄養素もあるので注意してください。
上述したとおり食事から摂りにくい栄養素なので、できる限りリスクを減らしましょう。
おすすめしない食事を2つ紹介します。
- ファストフードやコンビニ弁当、インスタントラーメン
- コーヒーや緑茶に含まれるタンニン
具体的に解説します。
ファストフードやコンビニ弁当、インスタントラーメン
これらの加工食品には、亜鉛の吸収を阻害する以下の成分が含まれています。
- リン酸塩
- ポリリン酸
- フィチン酸
- 多すぎる食物繊維
- グルタミン酸ナトリウム
分子生理化学研究所においても、次のように解説されています。
インスタントラーメンなどの加工食品にはリン酸塩、ポリリン酸、フィチン酸、グルタミン酸ナトリウムが使われ、これらの成分は亜鉛の吸収を阻害します。その為、普段からファストフードやコンビニ弁当ばかり食べていると、次第に亜鉛が不足状態になります。
出典:分子生理化学研究所
「禁止するべき」とまでは言いませんが、できるだけ控えることをおすすめします。
コーヒーや緑茶に含まれるタンニン
タンニンも亜鉛の吸収を阻害する恐れがあります。
北海道大学の研究においても、次の事実が報告されています。
タンニン酸の持つ最も重大な問題点は、食事として大量に摂取した場合に、鉄、特に非ヘム鉄の吸収を低下させることであり、この作用は、タンニン酸の持つ多数のガロイル基が寄与している。
出典:北海道大学
食事や亜鉛サプリを飲む際は、コーヒーや緑茶ではなく水がおすすめです。
抜け毛・薄毛は亜鉛を摂るだけではダメ!バランスの良い食事が重要
亜鉛と育毛の関係についてまとめます。
- 亜鉛に発毛効果はないが、「頭皮環境を改善する」「健康な髪を作りやすくする」という意味においては育毛効果が期待できる
- 亜鉛不足は抜け毛の原因になり、効果的に摂ることでからだ全体の健康維持に役立つ
- 亜鉛の過剰摂取は逆効果になるので、注意が必要
- ビタミンCや動物性タンパク質と一緒に摂ることで、効果を高められる
- 加工食品やコーヒーと一緒に摂取しない
大事なのは「食事のバランス」です。
やみくもに亜鉛サプリに頼ったり亜鉛が多く含まれる食事を取ったりするのではなく、普段から栄養バランスに気をつけましょう。