【薬剤師監修】円形脱毛症の原因と治療法を解説!女性や子供でもなってしまうの?
「円形脱毛症になってしまったかもしれない」
「どうにかしたいけど、具体的な解決策がわからない」
このようにお困りの方は、まず「自分が円形脱毛症なのかどうか」を冷静に見極めるのが大事です。
脱毛症には他の種類もあり、それぞれに原因や治療方法が異なるからです。
そこで本記事では、現在考えられている円形脱毛症の原因と、その治療法を科学的なエビデンスを噛み砕いて解説しています。
- 円形脱毛症の主な原因4つ
- 円形脱毛症の5つの種類
- 円形脱毛症の治療方法4選
記事を最後まで読むことで円形脱毛症の科学的根拠に基づいた原因や対処法がわかり、具体的な解決策を見いだせるようになります。
この記事の監修者
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北海道大学大学院卒業
薬局薬剤師としてAGAや壮年期脱毛症、円形脱毛症の医薬品調剤や服薬相談を多数経験
薄毛の悩みを解決できる医学薬学知識を啓蒙することで、患者さんのより良い人生に貢献したい
と思っております。
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円形脱毛症とは
円形脱毛症とは後天性の疾患で、円形や楕円形の脱毛斑が1箇所または複数発生する脱毛症を指します。
頭部だけでなく眉毛やその他体毛部分にも発生することがあり、治療して発毛が確認できても再発する可能性があります。
老若男女で年齢に関わらず発症する可能性があり、男性だけに起こる症状ではありません。
現在の医療では確実な治療法はまだ確立しておらず、改善や再発を繰り返すことと向き合いながら付き合っていく必要があります。
患者自身の精神的負担も大きく、ご家族やまわりの理解やサポートが重要です。
円形脱毛症になってしまう原因
円形脱毛症の原因として、一般的に考えられているのがストレスや生活習慣の乱れです。
しかし、これらが「原因である」とは立証されていません。
現在主流として考えられている原因は以下の4つです。
- 遺伝的要因
- 自己免疫疾患
- アトピー性疾患
- 心理的なストレス
遺伝的要因
円形脱毛症の原因の一つとして挙げられるのが、遺伝的要因です。
「円形脱毛症ガイドライン」でも次のように解説しています。
最新の大規模疫学調査(中国)では,AA 患者の 8.4%に家族内発症があり,患者との関係(親等)が近いほど発症率が高く,欧米の調査でも 1親等内での AA 発症は一般に比べて 10 倍である.
一卵性双生児の円形脱毛症一致率は「55%である」というデータも紹介されています。
自己免疫疾患
もっとも支持されているのが「自己免疫疾患である」という説です。
自己免疫疾患の合併が多いこと,免疫修飾作用のある治療法に効果をみることも自己免疫病因説を支持している.
自己免疫疾患とは、本来なら攻撃する必要のない身体の一部を「異物」と判断し、排除しようとしてしまうことで症状を引き起こす疾患です。
細胞を攻撃するT細胞が何らかの理由で活性化し、毛包をウィルスなどの異物と判断して体外に排出しようとすることで、円形脱毛症を発症すると考えられています。
実際に甲状腺疾患や尋常性白斑、関節リウマチなどさまざまな自己免疫性疾患を合併するとのデータがあり、同時に「免疫修復治療が有効であった」との報告もあります。
このことから「自己免疫疾患が原因で脱毛症を発症する可能性が高い」といえるでしょう。
アトピー性疾患
円形脱毛症の原因としてアトピー素因が挙げられます。
しかしながら、どのように関わっているかの科学的根拠はまだありません。
単に「関与する可能性がある」というレベルです。
また本症患者には高頻度にアトピー性皮膚炎などのアトピー性疾患を合併することから,本症の発症,治療効果,予後にアトピー素因が関与する可能性がある.
過去には円形脱毛症患者47例中「60%にあたる29例」が気管支喘息またはアトピー性皮膚炎、軽度のアレルギー性鼻炎などのアトピー性疾患を併発していたと報告されています。
このように円形脱毛症とアトピー性疾患には、何らかの関連があると考えられています。
心理的ストレス
一般的には、ストレスが円形脱毛症の原因として考えられることも少なくありません。
しかし、精神的ストレスがどの程度関与するかについてははっきりとしたデータがないのが現状です。
臨床的観察から精神的ストレスの関与が明らかな症例群の抽出が困難であり,今もって AA 発症と精神的ストレスとの直接の関連性についての科学的根拠は乏しい.
調査対象の患者74%が、人生の中で一度以上は精神疾患の診断を受けているものの、抑うつ状態と脱毛の関連性は認められませんでした。
1999年にトルコで発生した大地震の発生前後における円形脱毛症患者の発生率を調べた結果、自然災害のようなストレス環境は「症状発症の単一因子ではない」とした報告もあります。
円形脱毛症の種類
円形脱毛症の種類は5つに分けられます。
下にいくほど重症度が上がり、必要なケアも多くなります。
単発型
脱毛斑が単発のもので、円形や楕円形の脱毛斑が頭部に1箇所発生する一般的な症状です。
10円玉や500円玉サイズと表現されることが多く、自覚症状がなく現れることも少なくありません。
1年以内に回復する可能性が高いものの、再発する例も多いといわれています。
多発型
複数の脱毛斑が発生する症状で、単発型と同様に一般的ではあるものの、円形・楕円形の脱毛斑が2箇所以上発生します。
脱毛斑同士の融合や拡大・縮小、再発を繰り返し、慢性的に発症するため長期的な治療が必要な場合が多いです。
こちらも単発型と同様に回復する可能性が高いといわれていますが、再発可能性も低くないのが実情です。
蛇行型
頭髪の生え際が帯状に脱毛する症状です。
単発型や多発型のように円形の脱毛斑ではなく、髪の毛の生え際にそって蛇のように細長く広がる症状を指します。
後頭部や耳の側面、おでこなどの生え際が脱毛します。
全頭型
単発型の脱毛斑が頭部全体に拡大し、頭髪が抜け落ちてしまう症状です。
症状の中でも重度であり、単発型や多発型から進行していった場合の回復率は10%以下というデータも報告されています。
医療機関での治療を続けながら、ウィッグなどを活用することでうまく付き合っていくことが必要です。
汎発型
汎発型は頭部にくわえて、体毛すべてが脱毛し全身に拡大する症状をいいます。
頭部だけでなく、眉毛やまつげ、脇毛などの体毛すべてが脱毛するという、円形脱毛症の中でも最も症状が重く、長期的な治療とサポートが必要になります。
全頭型と同様、ウィッグなどを活用したり、まわりの理解を得ながら症状と向き合っていくことが大切です。
参考:日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
円形脱毛症の4つの治療方法
円形脱毛症の治療方法として約30種類が報告されています。
ガイドラインでは各項目の研究報告から審議され、それぞれ推奨度別で紹介されています。
推奨度が高い治療方法は以下のとおりです。
- ステロイドの局所注射:推奨度B(行うよう勧める)
- 局所免疫療法:推奨度B(行うよう勧める)
- ステロイドの外用療法:推奨度B(行うよう勧める)
- ステロイドの内服療法:推奨度C1(行ってもよい)
ステロイド局所注射
円形脱毛症の治療方法としてステロイド局所注射が推奨されています。
ステロイドには炎症や免疫機能をおさえる効果があり、ステロイド注射を真皮下層から皮下脂肪まで局所注射をすることで脱毛症の進行を改善します。
単発型や多発型への効果が立証されており、急性期や慢性期などを問わず有効です。
皮膚の萎縮を予防するために、投与後は部位をよく揉んでおくことが大切で、4〜6週間に1回の投与が推奨されています。
注射をした部位で皮膚の萎縮や痛みを伴う事例が報告されているため、広範囲での治療には向いていません。
子どもに対する長期研究結果報告が少ないことから、基本的には成人向けの治療方法として採用されています。
脱毛巣が頭部全体の25%以下の単発型や、多発型の成人患者へ行うことが推奨されている治療法です。
局所免疫療法
SADBE・DPCPといった化学物質を脱毛部位に塗布し、わざとかぶれを起こさせることで、毛包細胞を活性化させる治療法です。
塗布した部分と塗布しなかった部分を比較したときに「前者のほうで脱毛範囲が減った」という報告があることから、信頼性の高い根拠があると示唆されています。
一方で、次のような症状を引き起こす可能性もあるので注意してください。
- 皮膚炎
- リンパ節腫脹
- 頭痛
- 倦怠感
- 蕁麻疹
- 色素沈着
- 色素脱失
アトピー素因のある患者に対しては皮膚症状が悪化する可能性が報告されているため、治療開始前に医師としっかり確認したほうがよいでしょう。
SADBE・DPCPでの化学療法については、保険適用外になることも注意しなければいけません。
脱毛巣が25%以上の広範囲である多発型・全頭型・汎発型の治療に推奨される治療法です。
外用療法
ステロイド外用療法はもっとも広く用いられている外用治療法の一つです。
1日1〜2回、薬液の濃度を3段階の強さに分けて患部に塗布することで治療します。
治療メカニズムはステロイド局所注射療法と同様で、海外のガイドラインで有効性が認められていることから広範囲での使用が可能です。
副作用としてはニキビや吹き出物、毛包炎に注意が必要で、長期間使用することで皮膚の萎縮や血管拡張、陥凹を引き起こす可能性があります。
単発型から融合する可能性の少ない、多発型に対して有効な治療法として推奨されています。
内服療法
円形脱毛症の内服療法としてステロイド内服療法があげられます。
炎症や免疫機能をおさえる効果が期待でき、重症で進行性の早い成人に対して使用できる治療方法です。
試験結果から一定の割合で回復した事例が報告されており、発毛促進効果が期待できます。
ただし、副作用を避けるために3ヶ月以内といった限定的な使用が推奨されている点に注意してください。
副作用として報告されているのは以下のとおりです。
- 肥満
- 満月様顔貌(顔に脂肪が付き丸くなる症状)
- 緑内障
- 糖尿病
- 月経不順
- 骨粗鬆症
内服をやめると再発する可能性が高いというデータもあり、場合によっては他の外用療法や注射などを検討する必要があります。
円形脱毛症は女性や子供もなるの?
男性特有のAGAとは異なり、女性や子どもでも円形脱毛症になる可能性があります。
本症は人種を問わず認められ,男女差はなく全年齢層に出現する.
特に子どもは、一部の治療方法が認められていません。
医師と相談しながら、ウィッグ(かつら)など体に影響が少ない治療方法を検討しましょう。
女性は男性と同じ治療方法が認められています。
今回紹介した方法で治療をはじめるのがおすすめです。
ここで大事なのが「円形脱毛症なのかAGA・FAGA(女性型脱毛症)なのか」をはっきりさせるという点です。
AGA・FAGAと円形脱毛症は原因や治療方法が異なります。
そのため、自分が「どちらなのか」を見極める必要があります。
今回紹介した「種類」から判断するより、すこしでも不安を感じたら医療機関を受診しましょう。
AGA・FAGAにせよ円形脱毛症にせよ、放っておくとどんどん進行してしまいます。
円形脱毛症に気づいたら皮膚科に行けばいい?
上述したとおり、すぐに皮膚科を受診しましょう。
円形脱毛症の症状でなくても、「髪が薄くなってきた」「抜け毛が目立つ」などを実感したら早めに医療機関を受診するのがおすすめです。
どうしても「医療機関に行けない」という場合、オンライン診療してくれるクリニックを探してください。
皮膚科やAGAクリニックの中には、初診からオンライン診療に対応しているところもあります。
基本的に医療機関の診療方針に従うのが大事ですが、自分でできることもゼロではありません。
たとえば、「ミノキシジルの発毛剤を使う」という選択肢もあります。
ミノキシジルの発毛剤は「円形脱毛症ガイドライン」において「推奨度C1:行ってもよい」と評価されています。
3 件のランダム化比較試験(症例数 30,観察期間 1 年),症例数 30,観察期間 64 週),症例数 31,観察期間 15 カ月)により,3% ミノキシジルの外用がプラセボに比べ脱毛範囲を縮小させることを示唆する弱い根拠が,また 1 件のランダム化比較試験(症例数 66,観察期間 1 年)では,5% ミノキシジル外用剤が,1% ミノキシジル外用剤に比べ脱毛範囲をより縮小させることを示唆する弱い根拠が見いだされている.
同時に「以上のように引用論文のレベルは高いが,ミノキシジルの有用性は現段階では十分に実証されていない.」とも記載されていますが、否定もされていません。
症状が広範囲に渡る場合は効果が薄いですが、初期段階や狭い範囲なら改善する可能性もあります。
国内最大濃度かつ1本あたり3,000円というリーズナブルな発毛剤はこちらで紹介しています。
まとめ
円形脱毛症についてまとめます。
- AGAや薄毛とは異なり老若男女、年齢問わず発症する症状
- ストレスが原因とは断定されておらず、遺伝的要因や自己免疫疾患、アトピー性疾患が疑われる
- 頭部に1箇所発生する軽度の症状から、全身の体毛が脱毛する重度の症状までさまざま
- 局所注射や外用、内服などの適切な治療法で早期回復も見込めますが、再発する可能性がある
- 長期的な症状になることもあるため、医師と相談の上、早期対処が望ましい
すこしでも自覚する場合、早めに医療機関の受診をおすすめします。
下の記事でオンライン診療に対応しているクリニックを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。