AGA治療の自毛植毛には注意点もある?治療期間・メリットと併せて解説
AGAは男性に見られる代表的な薄毛ですが、ある程度症状が進行した場合、治療薬では改善しないこともあります。
このような場合に効果的とされる治療方法が自毛植毛です。
ただ、自毛植毛はメリットがある一方、いくつか注意点もあることも知っておきましょう。
本記事では、以下の点について分かりやすく解説しています。
- 自毛植毛の治療期間
- 自毛植毛の術式
- 自毛植毛のメリット
- 自毛植毛の注意点
- 自毛植毛以外のAGA治療法
自毛植毛に関する注意点がわかり、「自分はどうすればいいのか」を判断できるようになるので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の監修者
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北海道大学大学院卒業
薬局薬剤師としてAGAや壮年期脱毛症、円形脱毛症の医薬品調剤や服薬相談を多数経験
薄毛の悩みを解決できる医学薬学知識を啓蒙することで、患者さんのより良い人生に貢献したい
と思っております。
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AGA治療の自毛植毛とは?
AGA治療の自毛植毛には次のような特徴があります。
- 自分の髪の毛を移植する外科的治療
- 遺伝の影響を受けにくい場所から移植
- 高い発毛効果を期待できる
自毛植毛はその名のとおり、自分の髪を移植する外科的治療を意味します。
一般的には、後頭部や側頭部の髪の毛を移植する方法が採られます。
AGAには遺伝が深く関わっているのですが、後頭部や側頭部は遺伝の影響を受けにくいため、そこから髪の毛を毛穴ごと移植するのです。
移植された髪の毛は移植先でも遺伝の影響を受けにくい性質を維持するため、髪の毛がいったん抜けたとしても、また新しい髪の毛が生えてくるとされています。
AGAの治療法はさまざまですが、高い発毛効果を期待できるのが自毛植毛の特徴といえるでしょう。
自毛植毛の治療期間
自毛植毛をおこなったからといって、すぐに効果が実感できるわけではありません。
以下の点を知っておきましょう。
- 効果を実感するまでには4ヶ月程度かかる
- 治療期間は半年以上かかる
自毛植毛をおこなった場合、施術から1ヶ月ほどすると移植先で髪の毛が抜け落ちます。
せっかく移植したのに髪の毛が抜けると心配になるかもしれませんが、新たな髪の毛が生える前兆なので不安になる必要はありません。
髪の毛が抜け落ちる「ヘアサイクルの休止期」はおよそ2〜3ヶ月続くため、発毛効果を実感するには、およそ4ヶ月が必要となるのです。
髪の毛は1ヶ月につきおよそ1センチメートル伸びると言われているため、元の状態に戻るのに半年から1年以上かかるケースもあります。
自毛植毛のメリット
自毛植毛には以下のメリットがあります。
- 自分の毛髪なので拒絶反応が起こりにくい
- 毛根が消失している場合でも改善が期待される
- 長期的に高い効果が期待できる
- 日本皮膚科学会から推奨されている
- 治療にかかるランニングコストを抑えられる
それぞれ解説します。
自分の毛髪なので拒絶反応が起こりにくい
自毛植毛のメリットの1つが、自分の毛髪なので拒絶反応が起こりにくい点です。
植毛は大きく分けて2種類あります。
- 自毛植毛
- 人工毛植毛
人工毛植毛の場合、ナイロンやポリエステルで作った人工毛を薄毛部位に移植するのですが、拒絶反応を起こす危険性があるのです。
せっかく植毛をおこなったとしても拒絶反応が起こった場合、移植した人工毛まわりの髪の毛まで抜け落ちるリスクがあります。
自毛植毛の場合はそのような心配がありません。
また、施術後に起こる皮膚のトラブルも少なくて済むのもメリットです。
自毛植毛の効果は施術を担当する医師の技量に左右されますが、技量の高い医師が手術をおこなった場合、高い生着率が期待できます。
毛根が消失している場合でも改善が期待される
自毛植毛をおこなうメリットの1つが、毛根が消失している場合であっても、薄毛の改善が期待できる点です。
自毛植毛は髪の毛だけでなく毛根ごと皮膚を切除し、薄毛部分に移植するからです。
薄毛の治療法はさまざまですが、基本的に毛根が消失してしまった場合、二度とその毛穴から髪の毛が生えてくることはありません。
しかし、自毛植毛だと、こういった薄毛の末期症状でも改善できる可能性があるわけです。
また、自毛植毛には遺伝の影響を受けにくい後頭部などの毛髪が用いられるため、いったん髪の毛が抜けたとしても再び生えてくるとされています。
長期的に高い効果が期待できる
自毛植毛のメリットとして、長期的に高い効果が期待できることも挙げられます。
先述したように、自毛植毛には遺伝の影響を受けにくい後頭部や側頭部の毛髪が用いられるからです。
移植された毛髪は遺伝の影響を受けにくい性質を持ち続けるため、ヘアサイクルが終わりを迎えない限り、何度でも生え変わるとされているのです。
日本皮膚科学会から推奨されている
自毛植毛は、日本皮膚科学会からも推奨されている信頼度の高い治療法でもあります。
日本皮膚科学会が策定する男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインでは、自毛植毛は「推奨度:B(行うよう勧める)」としています。
一方で、上述した人工毛植毛は数多くの有害事象が報告されていることから「推奨度:D(行うべきではない)」なので注意してください。
治療にかかるランニングコストを抑えられる
長期的に見た場合、自毛植毛をおこなうと治療にかかるランニングコストを抑えられる可能性があります。
数あるAGA治療のなかで、自毛植毛はもっとも高額な治療法の一つです。
ただ、一度の手術で済むことも多く、通院費がかかりません。
かつらやウィッグとは異なり、メンテナンスの必要もないのです。
AGAは進行型の脱毛症なので、自毛植毛以外の治療法を選択した場合、長期にわたって通院や治療薬の内服を続ける必要があります。
長いスパンで見た場合、自毛植毛は他の治療法と比べ、かならずしも割高の治療ではないといえるわけですね。
自毛植毛の術式
自毛植毛の術式は、大きく分けると次の2タイプに分類されます。
- FUE法
- FUSS法
それぞれの特徴やメリット、デメリットについて解説します。
FUE法
FUE法は「Follicular Unit Excision」を略したもので、メスを使わない自毛植毛として知られています。
パンチブレードやパンチグラフトなどの専用機器を使い、1本の髪の毛を毛穴ごと採取するのが特徴です。
メスを使って移植毛を採取する場合と比べて比較的痛みが少なく、傷跡が目立ちにくいというメリットがあります。
ただ、髪の毛や毛穴を1つずつ採取する術式であるため術者の技量に仕上がりが左右されるのと、治療費が高額になる点がデメリットです。
FUSS法
FUSS法は「Follicular Unit Strip Surgery」を略したもので、スプリット法と呼ばれることもあります。
メスを使って後頭部の髪の毛を毛穴ごと帯状に切り取るのが特徴です。
その後、移植毛として株(ドラフト)単位に分け、薄毛部位に移植します。
頭皮を広範囲に渡って切除する術式であるため、短時間で効率よく採取することができ、費用を抑えられる点がメリットです。
ただ、広範囲に渡って頭皮を切除するため、手術後に激しい痛みに悩まされるデメリットがあります。
しばらくは仰向けで寝るのも困難でしょう。
FUE法よりもFUSS法の方が傷跡の面積が広いように思われがちですが、実際にはFUSS法の方が、傷跡の総面積が狭くなります。
自毛植毛の注意点
自毛植毛には以下のような注意点があることも知っておきましょう。
- 手術にともなうリスクがある
- ショックロスが起きることがある
- 移植しても生着しない可能性もある
- 移植できるドナー株に限りがある
- 自毛植毛と人工毛植毛は違う
詳しく解説します。
手術にともなうリスクがある
自毛植毛には、手術にともなうリスクがあることを知っておきましょう。
自毛植毛の術式はいくつかありますが、どの術式であってもある程度の傷跡が残ります。
頭皮を切除したまわりの髪の毛が伸びれば、いずれ傷跡は目立ちにくくなりますが、ある程度の時間が必要です。
また、手術の後には痛みも残るのが一般的です。
痛み以外にも、皮膚の赤みや腫れ、感覚の鈍化といった症状も多く見られます。
ショックロスが起きることがある
自毛植毛をおこなった場合、ショックロスを起こす可能性があることも知っておきましょう。
ショックロスとは、自毛植毛をおこなった場所にある髪の毛が抜け落ちる現象を意味します。
植毛した髪の毛が抜け落ちるだけでなく、植毛部位の周辺にもともと生えていた髪の毛も抜け落ちます。
自毛植毛の手術をしてから、1〜2ヶ月たったころにショックロスを起こすのが一般的です。
ショックロスを起こす原因については、現在のところはっきりと分かっていません。
ただ、ショックロスが起こっても髪の毛の成長期が始まれば再び髪の毛が生えてくるので、それほど心配する必要はありません。
移植しても生着しない可能性もある
自毛植毛の注意点として、移植した毛髪が100%生着する訳ではない点もあげられます。
手術をしてから24時間以内に移植部位の髪の毛が抜け落ちた場合、生着していない可能性が高いといえます。
移植した髪の毛を生着させるためにも、手術の当日は髪の毛を洗わないようにしましょう。
また、手術後に移植部位へ強い刺激が加わった場合、移植した髪の毛が抜けやすくなるため注意が必要です。
移植できるドナー株に限りがある
自毛植毛をおこなう場合の注意点として、移植できるドナー株に限りがある点もあげられます。
自毛植毛は後頭部や側頭部などから髪の毛を毛穴ごと移植する手術ですが、髪の毛の総数が増えるわけではありません。
また、後頭部や側頭部から移植できる回数は、4〜6回が上限となっています。
そのため、ある程度進行した薄毛には対応できないこともあるのです。
自毛植毛と人工毛植毛は違う
先ほど少し触れたのですが、植毛には自毛植毛と人工毛植毛の2タイプがあります。
人工毛植毛は、ナイロンなどの合成繊維から作られた人工毛を薄毛部位に移植する術式です。
上述したように自毛植毛は自分の毛髪を移植する術式であるため、拒絶反応のリスクがありません。
一方、人工毛植毛は自分の身体の一部ではない人工毛を移植する術式なので、拒絶反応を起こす危険性があります。
実際にいくつかの有害事象が報告されているため、人工毛植毛はおすすめできません。
自毛植毛以外のAGA治療法
AGA治療は自分に合う方法を探すのも重要です。
自毛植毛以外の治療法は以下のとおりです。
- 外用薬
- 内服薬
- 注入療法
- 光治療
それぞれ簡単に解説します。
外用薬
もっともスタンダードな治療方法とされているのがミノキシジル外用薬です。
ミノキシジル外用薬は血管を拡張し、血液の循環を促進するのが特徴です。
頭皮への血流を促進することで、頭皮環境を改善し、髪の毛の健やかな成長をサポートします。
ミノキシジル外用薬は自毛植毛よりも推奨されており、「AGAガイドライン」においても「推奨度:A(行うよう強く勧める)」の治療法です。
自毛植毛と違って通販などで手に入れられることから、ミノキシジル外用薬からAGA治療をスタートさせる方が多いです。
国内最大濃度かつ通販で購入できるミノキシジル外用薬はこちらをご覧ください。
内服薬
内服薬も自毛植毛以外のAGA治療法として一般的です。
主に2種類あります。
- フィナステリド
- デュタステリド
どちらも「AGAガイドライン」では「推奨度:A(行うよう強く勧める)」と評価されています。
フィナステリド・デュタステリドの効果は5αリダクターゼの働きを阻害するというものです。
5αリダクターゼの働きを阻害することで、抜け毛を引き起こすDHT(ジヒドロテストステロン)の産生を抑止するわけですね。
詳しくは下の記事をご覧ください。
注入療法
自毛植毛以外のAGA治療法としては、注入療法もあげられます。
AGA治療においては、メソセラピーと呼ばれる注入療法が主流です。
メソセラピーは頭皮下に直接、髪の毛の成長因子(グロースファクター)やミノキシジルを注入する治療法です。
成長因子にはインスリン様成長因子の他、血管内皮細胞成長因子(VEGF)やケラチノサイト成長因子(KGF)などがあります。
メソセラピーは副作用のリスクが少なく、投薬治療よりも早く発毛効果を実感できることが多いです。
発毛メソセラピーに関しては、下の記事で詳しくまとめています。
光治療
光治療も自毛植毛以外のAGA治療法です。
たとえば、高輝度LEDの光を頭皮に照射すると、髪の毛の成長を阻害する因子の働きを抑制する効果が得られると言われています。
光治療単独でAGAの改善を図ることは少ないですが、その他の治療法と組み合わせることで薄毛の改善が期待できます。
副作用のリスクがほとんどないため、投薬治療の副作用が心配な方におすすめです。
まとめ
自毛植毛の注意点についてまとめます。
- 自毛植毛は拒絶反応が少なくもっとも確実な発毛方法
- 効果を実感するまでに4ヶ月ほどかかる
- 自毛植毛には長期的に高い発毛効果が期待できるためランニングコストが低い
- 手術にともなって頭皮の痛みや赤み、腫れが生じるリスクもある
- 自毛植毛以外にもAGAの治療法はいろいろある
薄毛を根本から改善したい場合、自毛植毛は非常に効果が高い治療法です。
ただ、初期費用が割高である点と術後に痛みがともなうという注意点があります。
また、非常に高額なので注意してください。
AGA治療をはじめる場合、まずはミノキシジル外用薬からはじめましょう。