【薬剤師監修】産後の抜け毛はいつまで続く?髪の毛が抜ける原因と正しい対策とは
産後に「抜け毛が増えた」と感じる女性は少なくありません。
人によっては地肌が透けて見えるほど髪の毛が減ってしまい、深く悩んでしまうケースもあります。
本記事では薬剤師監修のもと、以下の点を解説します。
- 産後の抜け毛を悪化させる4つの原因
- 産後の抜け毛はいつからいつまでなのか
- 産後の抜け毛対策5選
産後の抜け毛について悩む方が「知りたい」と感じる情報を徹底網羅しましたので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の監修者
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北海道大学大学院卒業
薬局薬剤師としてAGAや壮年期脱毛症、円形脱毛症の医薬品調剤や服薬相談を多数経験
薄毛の悩みを解決できる医学薬学知識を啓蒙することで、患者さんのより良い人生に貢献したい
と思っております。
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産後に髪の毛が抜ける原因は女性ホルモン分泌量の変化!
産後に髪の毛が抜ける原因は、出産をきっかけに女性ホルモンの分泌量が変化するからだと考えられています。
妊娠中は、黄体ホルモン「プロゲステロン」と卵胞ホルモン「エストロゲン」の分泌量が大幅に増加します。
これらの女性ホルモン、特にエストロゲンには髪の毛の健康を保つ働きがあるため、妊娠中は体毛が濃くなったり、髪の毛が抜けにくくなったりする傾向が見られます。
しかし、出産と同時に女性ホルモンの分泌量は激減します。
その結果、それまで抜けずにいた髪の毛が一気に抜けて、「薄毛になった」と感じてしまうのです。
産後の抜け毛を悪化させる4つの原因
ホルモンバランスの変化以外に産後の抜け毛を悪化させる原因として、以下の4つが挙げられます。
- 心身のストレス
- 栄養不足
- 睡眠不足
- 頭皮環境の悪化
心身のストレス
産後うつという言葉もあるように、産後は心身のストレスが溜まりやすい時期です。
母体が出産のダメージから回復しきらないまま、昼夜を問わず新生児のお世話に振り回され「気分転換をしたくても外出もままならない」という状況に、ストレスを溜め込んでしまう人も少なくありません。
ストレスを感じると交感神経が緊張して、血管が収縮します。
その結果、頭皮の血流が滞って髪の毛に十分な栄養が届かなくなり、抜け毛を悪化させると考えられているのです。
また、ストレスに対抗するために、肝臓はメタロチオネインという物質を生成します。
種々の身体的・心理的ストレスによって、メタロチオネイン(重金属結合低分子量蛋白質)が誘導・生合成され、肝・血液・尿中のメタロチオネイン量が増加することが知られてきた。
この際、体内では大量の亜鉛が消費されてしまうのです。
…(前略)細胞内における亜鉛のメタロチオネインへの結合量が増加し,その際は亜鉛の
吸収効率は低下する
髪の毛の成長を促す亜鉛が不足することも、産後の抜け毛に悪影響を及ぼすとされています。
栄養不足
栄養不足も、産後に髪の毛が抜けやすい原因の一つです。
赤ちゃんの大切な栄養源となる母乳は、母親の血液から作られます。
鉄分やカロリーなどの栄養が母乳に取られてしまう分、母体は栄養不足に陥りがちなのです。
前述のように、産後は育児に振り回されて、ゆっくり食事をする時間が取れないというケースも珍しくありません。
結果として、髪の毛に十分な栄養が行き渡らなくなり、髪質が低下したり、抜け毛が増加したりしてしまうのです。
さらに、「妊娠前の体型に戻したいから」といって産後すぐに無理なダイエットを行うと、栄養不足に拍車がかかって抜け毛を悪化させる恐れがあります。
母体はもちろんのこと、髪の毛の健康を考えるうえでも、産後すぐのダイエットは控えたほうがよいでしょう。
睡眠不足
睡眠中に分泌される成長ホルモンには、頭皮や髪の毛のダメージを修復したり、髪の毛の成長を促したりする働きがあります。
成長ホルモンは深い眠りに入ってから3〜4時間後に分泌量が増えるとされており、十分な分泌量を得るためには質の良い睡眠をとることが大切です。
しかし、産後は頻回な授乳や夜泣きによって十分な睡眠時間が取れず、睡眠の質が低下しやすくなります。
成長ホルモンの分泌量が低下すると、抜け毛が悪化する可能性があるのです。
睡眠と髪の関係については下の記事をご覧ください。
頭皮環境の悪化
産後のストレスやホルモンバランスの乱れは皮脂の過剰分泌を引き起こし、頭皮環境の悪化につながります。
頭皮環境が悪化すると、髪の毛の成長を司るヘアサイクルが崩れて、健康な髪の毛が育ちにくくなる恐れがあります。
また、炎症などのトラブルも生じやすくなり、抜け毛が増えるケースもあるでしょう。
産後の抜け毛はいつからいつまで?ピークはいつ?
産後の抜け毛は、以下のようなタイミングで起きると考えられています。
- 抜け毛の始まり:出産して2~3ヶ月
- 抜け毛の終わり:出産して6~12ヵ月
抜け毛の始まり:出産して2〜3ヶ月
個人差はありますが、産後の抜け毛は出産して2〜3ヶ月後に始まることが多いとされています。
健康な人でも1日に50~100本程度は髪の毛が抜けると言われていますが、産後はさらに多くの本数が抜けるため「抜け毛が増えた」と感じる人も少なくありません。
特に、シャンプーをしたときやブラッシングをしたときに、脱毛の多さに気づくケースがほとんどです。
シャンプー時の抜け毛に関しては下の記事でまとめています。
抜け毛の終わり:出産して6~12ヶ月
こちらも個人差によって時期は多少前後しますが、産後2~3ヶ月で始まった抜け毛は、4~6ヵ月でピークを迎え、その後は12ヵ月頃までにおおむね落ち着くとされています。
12ヵ月が経つころには新しい髪の毛も生え始め、薄毛に感じていた部分も、徐々に元の毛量へと戻っていきます。
クレアージュ東京 エイジングケアクリニックの調査によると、55%が半年以上、36%が1年以上かかった、とわかっているのです。
出典:PR TIMES
このように、産後の抜け毛は時間の経過と共に自然と落ち着くケースが多いため、一時的に「抜け毛が増えた」と感じても、過度の心配や焦りは不要です。
産後の抜け毛対策5選
産後の抜け毛におすすめな対策は、おもに以下の5つです。
- 気にしすぎない
- 栄養バランスのとれた食事
- 質の良い睡眠
- 正しい頭皮ケア
- クリニックの受診
気にしすぎない
産後の抜け毛の多くは、出産をきっかけにしたホルモンバランスの変化によるものです。そのため、ほとんどの抜け毛は長くても1年程度で落ち着くと考えられます。
産後は抜け毛以外にも、さまざまな事柄に心配や不安を感じやすい時期です。抜け毛を気にしてストレスを溜め込むと、それが原因でさらに抜け毛が悪化する恐れもあります。
負のループに陥らないためにも、気にしすぎないことは大切と言えるでしょう。
栄養バランスのとれた食事
健康で丈夫な髪の毛を育てるためには、栄養バランスのとれた食事も大切です。忙しいからと偏った食生活をしていると、頭皮だけでなく体全体に栄養が行き渡らなくなり、体調不良などの原因にもなりかねません。
髪の毛に良いとされる栄養素には、次のようなものが挙げられます。
- たんぱく質
- 亜鉛
- ヨウ素
- ビタミンE
- ビタミンB群
- EPA
- ポリフェノール
それぞれの効果は下をご覧ください。
たんぱく質 | 髪の毛の元になる成分です。
たんぱく質には「動物性たんぱく質」と「植物性たんぱく質」の2種類が存在し、動物性たんぱく質は牛肉・鶏卵、植物性たんぱく質は大豆製品・えんどう豆などに多く含まれています。 |
亜鉛 | 髪の主成分であるたんぱく質(ケラチン)の生成を助ける栄養素です。亜鉛を多く含む食材としては、牡蠣・鶏レバー・牛赤身肉・アーモンド・ナッツなどが挙げられます。 |
ヨウ素 | 新陳代謝を促して髪の成長をサポートする働きを持っています。昆布・わかめ・海苔などの海藻類に豊富とされています。 |
ビタミンE | 頭皮環境の改善に効果のある栄養素として知られ、植物油・ナッツ類・ツナ缶・魚介類(鮭・うなぎ)・緑黄色野菜などに多く含まれます。 |
ビタミンB群 | 髪の毛のもととなる細胞の再生・新生やホルモンの働きを調整する効果があります。ビタミンB2はレバー・鶏卵・チーズ、ビタミンB6は肉・魚介類、ビタミンB7はナッツ類や大豆製品などに豊富です。 |
さらに、あじ・さば・さんまなどの青魚に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)や、ブルーベリー・赤ワインに多く含まれるポリフェノールも、産後の抜け毛を改善するのに有益な栄養素とされています。
栄養に関しては下の記事をご覧ください。
質の良い睡眠
前述の通り、髪の毛の健康を維持するには、成長ホルモンの存在が欠かせません。
成長ホルモンの分泌量は深い眠りによって増加するため、質の良い睡眠を得ることが大切です。
質の良い睡眠とは、寝つきが良い・ぐっすり眠れる・寝起きがすっきりしているなどの条件を満たすものを言います。
睡眠の質を上げるためには、以下の方法が効果的です。
- 就寝の3時間前には食事を済ませる
- 温かい飲み物で内臓をあたためる
- ぬるめのお湯に入浴する
- リラックス効果のある音楽を聴く
- 休日も生活リズムを崩さない
- 室温や部屋の明るさを快適なものに調整する
- 適度に運動をする
ぜひすべて実践してみてください。
正しい頭皮ケア
正しい頭皮ケアも、産後の抜け毛を改善する効果が期待できます。
以下の頭皮ケアを心がけましょう。
- 低刺激のシャンプーを使う
- シャンプーやトリートメントの後はしっかりと洗い流す
- ドライヤーをかける前にタオルドライを行う
- 強温風、弱温風、冷風を使い分ける
細かなケアを行うことが、頭皮の保護につながるのです。
具体的な頭皮ケアの方法は下の記事で紹介しています。
クリニックの受診
脱毛の量が多い・地肌が透けてくるなど気になる症状があるときは、クリニックを受診するのも一つの選択肢です。
まずはかかりつけの産婦人科で相談してみると良いでしょう。
また、自身の症状に合わせて内科・皮膚科・メンタルクリニックなどを訪れてみるのも効果的です。
産後の抜け毛が終わらない場合は、発毛治療を行っている専門のクリニックに診てもらいましょう。
まとめ
産後の抜け毛についてまとめます。
- 産後は高くなった女性ホルモンが一気に減少することから、通常よりも抜け毛が多くなるとされている
- 産後のストレスや生活習慣の悪化で、抜け毛が増えたりもとに戻らなかったりすることもある
- 抜け毛がはじまるのは2〜3ヵ月程度で、約半年程度でもとに戻る
- しかし、なかには1年以上続くケースもある
- 栄養をしっかりと摂取し、質の良い睡眠を確保する
抜け毛がいつまでも続く場合、産後のエストロゲン減少が原因ではない可能性もあります。
たとえば、FAGAを発症している可能性もあるので気をつけてください。
FAGAについては下の記事で紹介しています。