テストステロンが多いことが薄毛になる?男性ホルモンとAGAの関係とは
薄毛の原因は、テストステロンではありません。
筋トレなどでテストステロンの分泌量を増やしても、薄毛になるわけではないので安心してください。
一方で、ジヒドロテストステロンと呼ばれる男性ホルモンがAGAの原因とされているのは事実です。
そこで本記事では、 専門家監修のもと以下の点を解説します。
- AGAを引き起こす原因となるホルモン
- 薄毛と遺伝との関係
- 遺伝以外の薄毛の要因
- AGAへの対処法
記事をすべて読むことで、テストステロンと薄毛の関係や「薄毛になったらどうするべきなのか」に対する正しい情報が手に入ります。
この記事の監修者
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北海道大学大学院卒業
薬局薬剤師としてAGAや壮年期脱毛症、円形脱毛症の医薬品調剤や服薬相談を多数経験
薄毛の悩みを解決できる医学薬学知識を啓蒙することで、患者さんのより良い人生に貢献したい
と思っております。
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テストステロンの分泌量が直接的な薄毛の原因ではない
男性ホルモンであるテストステロンが多いからといって、薄毛になるとは言いきれません。
男性ホルモンは男性らしく健康に過ごすため欠かせないホルモンです。
分泌量が多いからと言って薄毛になるといった医学的根拠はありません。
では、テストステロンにはどのような特徴があるのでしょうか。
- テストステロンの本来の役割
- テストステロンが多い人の特徴
まずは以上の2点について見ていきましょう。
テストステロンの本来の役割
テストステロンは簡単にいうと、男性が男性らしくあるためのホルモンです。
具体的には次のような役割があります。
- 生殖器を発達させる
- 二次性徴を促す
- 筋肉や骨格を男性らしく成長させる
- 性欲や性衝動を亢進させる
- バイタリティを高める
乳幼児期や思春期には、テストステロンの働きによって生殖器が成長します。
また、テストステロンが分泌されることで、性欲や性衝動を亢進させ、種を保存するための本能が働くのです。
筋肉や骨格を男性らしくがっしりと成長させるのも、テストステロンの働きです。
テストステロンには脳や精神にも影響を与えます。
女性に比べて男性がバイタリティにあふれているのは、テストステロンの働きによると考えられています。
テストステロンが多い人の特徴
テストステロンが多い人に共通する特徴としては、次のような点が挙げられます。
- チャレンジ精神に富んでいる
- 失敗してもくよくよしない
- 身体つきががっしりしている
- 声が大きい
- 攻撃的な性格になることもある
- 性生活が充実している
テストステロンを測定する方法
テストステロンは、測定キットを使ったりクリニックを受診したりすることで測定できます。
たとえば、株式会社ダンテは「バディチェック」という商品を販売しているのですが、こちらを使えばテストステロンや精子濃度などを測定してくれるのです(参考:http://www.dantte.jp/buddy-check)。
テストステロンが少ないかどうかの基準
テストステロンが少ないかどうかは、こちらをご覧ください。
血中遊離テストステロン値 | テストステロン |
16.2pg/ml以上 | 正常 |
12.6pg/ml〜16.1pg/m | やや少ない |
12.5pg/ml以下 | 少ない |
測定して判明した数値がどの項目に当てはまるかを確認しましょう。
12.5pg/m以下だと、男性型の更年期障害である「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」の可能性が高いです。
測定キットなしで確認する方法
測定キットがない方は、こちらに自分が当てはまっているかチェックしてください。
こちらは「Aging Male Symptom (AMS)スコア」と呼ばれる、LOH症候群かどうかを確認するチェック方法です。
- 総合的に調子が思わしくない
- 関節や筋肉が痛い
- 運動などと関係なく汗が出る
- 寝付きが悪く、ぐっすり眠れない
- 日中眠くなったり疲れを感じたりする
- いらいらする
- 神経質になった
- 不安感がある
- 身体の披露や行動力の減退を感じる
- 筋力低下
- 落ち込みやすい
- 「人生の山は過ぎた」と感じる
- どん底にいるような気分
- ひげの伸びが遅くなった
- 性的能力が衰えた
- 朝立ちの回数が減った
- 性欲の低下
この項目に対して、当てはまるごとに1〜5まで点数をつけてみましょう。
たとえば、「関節や筋肉が痛い」に当てはまらなければ1点、「筋力低下」に強く当てはまれば5点、といった感じです。
合計を出したら、こちらをご覧ください。
- 26点以下:症状なし
- 27~36点:軽 度
- 37~49点:中程度
- 50点以上:重 度
つまり、26点以下であればテストステロンの値は正常値で、37点以上の場合は「低い」と考えられます。
50以上の場合は、早めに医療機関などを受診したほうがいいでしょう。
テストステロンが少ない男の特徴4選
冒頭でも触れましたが、テストステロンは男性にとって欠かせないホルモンです。
「ハゲると聞いたから」といってテストステロンを意図的に作らないような生活をしていると、このような特徴の男性になりかねません。
不安になりやすい
テストステロンの量は男性のメンタルを大きく左右すると言われており、多ければ多いほど行動的・積極的になりやすいです。
俗説として、「テストステロンが多すぎると凶暴化する」などと言われる場合もありますが、科学的な根拠はありません。
反対に、テストステロンが少ないと不安になりやすくちょっとしたことで落ち込んでしまうのです。
実際、LOH症候群はテストステロンの現象が原因とされているのですが、鬱や気分の落ち込みなどが症状として挙げられます。
集中が続かない
集中力の低下もテストステロンの減少が原因の一つと考えられます。
より具体的に言えば、集中力を含めた認知機能(高次精神機能)の働きが鈍くなってしまうわけです。
そのため、テストステロンが著しく減少すれば、ものを覚えにくくなったり学習能力や判断能力が低下したりする恐れがあります。
筋肉量が少ない
筋肉量はテストステロンと大きな関わりがある、とされています。
実際に、加齢とともにテストステロンが減少すると筋肉量も減ってしまう、という報告もあります(参考:日本人筋肉量の加齢による特徴)。
筋肉量が少ないため、ちょっとした運動ですぐに筋肉痛を引き起こしかねません。
逆に言えば、日頃からしっかりトレーニングや運動をすることで、老化によるテストステロンの減少を食い止められる可能性があるわけです。
性欲が弱い
テストステロンは精巣で作られます。
そのため、テストステロンの量が少なくなったということは、精巣が十分な機能を果たしていないと考えられるのです。
場合によっては勃起障害(ED)などを引き起こしてしまうこともあります。
「以前より性欲を感じなくなった」「最近、著しく性欲が減退している」こういった方は、テストステロンが少なくなっている可能性があるでしょう。
「男性ホルモンが薄毛の原因」はウソ?
かつては「男性ホルモンの一種であるテストステロンが多いと薄毛になりやすい」と言われていました。
現在では、その考え方は否定されています。
- 薄毛の原因となる男性ホルモンは「ジヒドロテストステロン」
- ジヒドロテストステロンが薄毛につながるAGAのメカニズム
ここでは、以上の2点について詳しく解説します。
薄毛の原因となる男性ホルモンは「ジヒドロテストステロン」
薄毛の原因となる男性ホルモンは、テストステロンではなく、ジヒドロテストステロン(DHT)であることが分かっています。
ジヒドロテストステロンには男児の生殖器を発達させる働きがあるだけでなく、認知力や記憶力にも関与していると考えられています。
つまり、男性の成長期において、ジヒドロテストステロンは重要な働きを持つホルモンだと言えるのです。
ジヒドロテストステロンについては、下の記事で詳しく解説しています。
ジヒドロテストステロンが薄毛につながるAGAのメカニズム
ジヒドロテストステロンは、テストステロンと5α-リダクターゼが結合して生成されます。
生成されると男性ホルモン受容体であるアンドロゲンレセプターと結びつき、脱毛因子「TGF-β」や脱毛タンパク「DKK1」を産生します。
すると、毛母細胞がダメージを受け、髪が抜けてしまうのです。
結果としてヘアサイクルが乱れ、薄毛が進行してしまいます。
これがAGAの症状です。
このように薄毛の原因はジヒドロテストステロンであり、テストステロンではないのです。
AGAの原因に関しては下の記事をご覧ください。
薄毛のなりやすさは遺伝的な要素が大きい
薄毛のなりやすさは、遺伝的な要素が大きいと考えられています。
実は、DHTを生み出す5αリダクターゼの活性度やアンドロゲンレセプターの感受性は、遺伝によって左右されることが分かっているのです。
遺伝的に5αリダクターゼが活発に働く男性の場合、AGA(男性型脱毛症)を発症する可能性も高くなります。
5αリダクターゼの活性度を示す遺伝子は両親から受け継がれる、と言われています。
また、アンドロゲンレセプターの感受性を示す遺伝子はX染色体を通して遺伝します。
したがって母親の父親がAGAなら、自分にも「AGAになりやすい遺伝子が受け継がれている」といえるでしょう。
詳しくは下の記事でまとめています。
薄毛を促進させる遺伝以外の原因
男性に見られる代表的な薄毛であるAGAには、遺伝的要因が深く関わっています。
ただし、薄毛を促進するのは遺伝的な要因だけではありません。
- 頭皮の血流が悪い
- 皮脂の分泌量が多い
- 頭皮への外的な刺激が多い
上記のような要素が加わると、さらに薄毛のリスクを高めると考えられています。
それぞれについて解説します。
頭皮の血流が悪い
薄毛を促進させる遺伝以外の原因として、頭皮の血流が悪いことも挙げられます。
頭皮には毛細血管が多く分布しており、もともと血流が悪くなりやすい場所の1つとされているのです。
髪の毛は毛母細胞が分裂することで成長しますが、分裂の際に必要となるエネルギーを運んでくるのが血液です。
何らかの原因によって頭皮へと送られる血液の量が減少すると、髪の毛の成長に悪影響をおよぼし、結果として薄毛になるリスクを高めてしまいます。
頭皮への血流を阻害する原因としては、身体の冷えや筋肉量の減少、運動不足、長時間のデスクワークにともなう筋緊張などがあります。
また、自律神経のバランスが乱れると、血液循環に悪影響をおよぼすと考えられています。
ストレスなどが原因で交感神経優位の状態が続くと、血管が収縮するためです。
皮脂の分泌量が多い
皮脂の分泌量が多いことも、薄毛を促進させる原因の一つです。
分泌が多いと頭皮環境が悪化してしまうからです。
皮脂には常在菌の一種であるマラセチアが棲みついています。
マラセチアは皮脂をエサとして増殖するため、皮脂の分泌量が多いと異常に繁殖してしまうのです。
マラセチアが異常に繁殖した場合、炎症性の皮膚疾患である脂漏性皮膚炎の発症リスクが高くなります。
脂漏性皮膚炎を発症したからと言って、直接的に抜け毛の量が増えるわけではありません。
しかし、脂漏性皮膚炎を発症するような頭皮の状態がつづくと、頭皮環境が悪化して、髪の毛の成長に悪影響をおよぼすのです。
頭皮への外的な刺激が多い
誤ったヘアケアや紫外線など、頭皮への外的な刺激が多いことも薄毛を促進させる原因となります。
とくに、毎日のように使っているシャンプーには注意が必要です。
市販のシャンプーには、髪の毛や頭皮にとって好ましくない成分が含まれていることもあるからです。
中でも合成界面活性剤は、頭皮環境の悪化を引き起こす原因の1つとしてよく知られています。
合成界面活性剤には、油汚れを浮かせ洗い流しやすくする働きがありますが、頭皮を守るべき皮脂まで根こそぎ洗い流してしまいます。
その結果、頭皮環境の悪化を引き起こし、抜け毛や薄毛のリスクを高める結果となってしまうのです。
ジヒドロテストステロンを抑制して薄毛の予防・進行抑止・改善を!
AGAの発症を完全に抑制することは難しいのですが、抜け毛や薄毛を予防する方法はいくつかあります。
そこで、ここでは「AGAを予防する方法」と「発症したあとの治療方法」を紹介します。
薄毛の予防には生活習慣の改善が有効
薄毛の予防には生活習慣の改善が有効です。
見直すべきポイントは以下の3つです。
- 運動
- 睡眠
- 食事
運動
薄毛を予防する方法の1つが、日頃から習慣的に運動に取り組むことです。
筋肉には関節を動かしたり、熱を産生したりする働き以外に、全身の血液循環をサポートする働きがあります。
運動不足によって筋力が低下すると、全身の血液循環に悪影響をおよぼします。
血行不良におちいった場合、頭皮に栄養が届かなくなってしまいかねません。
髪の毛が成長するための栄養は血液によって送り届けられるため、血液の循環が悪くなると抜け毛や薄毛のリスクを高めます。
日頃から運動に取り組むと、筋力の低下を予防できるだけでなく、筋肉を刺激することで、血行を促進する結果にも繋がります。
運動経験がない方や、運動が苦手だという方は、エスカレーターやエレベーターの代わりに、階段を使うなど小さい工夫するとよいでしょう。
睡眠
薄毛を予防するためには、睡眠習慣を見直すことも重要です。
睡眠不足状態が続くと成長ホルモンの分泌が滞り、髪の毛を成長させるためのタンパク質が合成できなくなってしまいます。
その結果、抜け毛や薄毛のリスクが高くなるのです。
人間の体内では、就寝からしばらくして盛んな成長ホルモンの分泌が起こります。
成長ホルモンは成長期の児童や生徒にだけ分泌されるのではなく、人間が一生を終えるまで分泌され続けるのが特徴です。
薄毛を予防するためには、睡眠時間の確保も必要ですが、睡眠の質を高めることも重要です。
睡眠の質を高めるためには、日中に身体を動かし、夜間はお風呂に浸かるなどリラックスするとよいでしょう。
寝る直前までスマホやテレビをみていると、脳が興奮状態となり、睡眠の質の低下を招くため注意が必要です。
詳しくは下の記事をご覧ください。
食事
薄毛を予防するためには、普段の食事に気をつける必要があります。
特に、日常的に良質なタンパク質を摂取しましょう。
髪の毛はタンパク質の一種であるケラチンからできています。
また、髪の毛の元となるタンパク質を再合成するため、必須アミノ酸である亜鉛の摂取も欠かせません。
頭皮環境を整え、血液の循環を促進し、皮脂の分泌量をコントロールするため、ビタミン群やミネラルを多く含む食事を意識するのがおすすめです。
食事に関しては下の記事で詳しく解説しています。
AGA発症後は治療が必須
薄毛の予防であればセルフケアでも効果が期待できますが、AGAの発症が疑われる場合、治療が必須です。
AGAには進行型という特徴があるため、生活習慣の改善では根本的に治りません。
しかし、早期治療すれば、年齢相応の毛髪量を維持することが期待できます。
- AGA治療は投薬治療が基本
- その他の治療法
ここでは上記の2点について解説します。
AGA治療は投薬治療が基本
AGA治療は投薬治療が基本です。
主に抜け毛を予防する目的でフィナステリドやデュタステリドが、発毛を促進する目的でミノキシジルが用いられます。
フィナステリドやデュタステリドには、AGAの原因である5α-リダクターゼの働きを阻害し、ジヒドロテストステロンの生成を抑制する作用があります。
ミノキシジルの働きは血行を促進したり発毛シグナルを促したり、毛母細胞の死滅を抑制したりすることです。
フィナステリドとミノキシジル、もしくはデュタステリドとミノキシジルを併用することで、より高い発毛効果を得ることが期待できます。
AGAの治療については下の記事をご覧ください。
その他の治療法
投薬治療以外のAGA治療法としては、メソセラピーや自毛植毛などが挙げられます。
メソセラピーは、頭皮下に髪の毛の成長因子(グロースファクター)を注入する治療法です。
自毛植毛は、薄毛部分に自分の毛を移植する治療方法です。
メソセラピーには投薬治療よりも早期の発毛効果が期待されています。
また、薄毛の範囲があまりにも広い場合、自毛植毛が検討されることもあります。
メソセラピーについては下の記事を参考にしてください。
自毛植毛のメリット・デメリットは下の記事で解説しています。
まとめ
テストステロンと薄毛についてまとめます。
-
- テストステロンが直接的な薄毛の原因ではない
- 薄毛のリスクを高めるのはジヒドロテストステロン
- 薄毛には遺伝的な要因が深く関わっている
- AGAを発症した場合は早めの治療が効果的
AGAを引き起こす原因となるのは、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロンです。
AGAを根本的に治療できるわけではないものの、抜け毛を減らすためには生活習慣の改善を心がけましょう。
AGAを発症した場合、治療しないと確実に薄毛が進行します。
なるべく早めに専門のクリニックを受診するのがおすすめです。